平成三年(わ)第二〇八号
証 拠 開 示 命 令 申 立 書
被告人
右の者に対する業務上過失致死、道路交通法違反被告事件について、弁護人は次のとおり証拠開示命令を求める。
一九九二年一月一四日
弁護人
浦和地方裁判所第三刑事部 御中
申立の趣旨
検察官は、弁護人に対し、
1 被告人の司法警察員及び検察官に対するすべての供述調書、
2 大宮警察署留置担当者が作成した、被告人にかかる留置人名簿、留置人出入簿、留置人接見簿その他の留置関係書類
を、遅くとも次回公判期日の七日前までに、閲覧及び謄写する機会を与えなければならない。
との決定を求める。
申立の理由
一 本件において、弁護人は被告人の捜査段階における供述調書の証拠能力を争うものであり、既になされた被告人質問の結果からも明らかなように、これらの供述調書は、生まれて初めて身柄を拘束されたうえ風邪のために発熱や咳が続き著しく体調の悪い被告人に対して、同人が事件についての記憶を全く有していないと言うにもかかわらず、不当な誘導を行い、時には脅迫するなどして作成されたものである。
二 被告人について作成された供述調書は、検察官が公判において請求したものの他に少なくとも三通存在する。検察官は、弁護人の採算の要請に対して、これらの書類の閲覧は認めたものの謄写については頑なにこれを拒否し続けている。
三 留置人出入簿等については、弁護人が口頭で開示を要請したが、検察官からは応答がない。
四 今後、被告人に対する取調べ経過をめぐっては、検察官申請により取調べ担当官の証人調べが行われると思われるが、これらの証人の証言に正確さを期し、かつ、効果的な反対尋問を行うためには、留置関係書類のような、取調べ経過についてのある程度客観的な証拠について弁護人が十分に検討しておくことが不可欠であり、また、被告人の捜査段階における供述の経過を記載した調書を全て十分に検討しておく必要がある。
この十分な検討を行うためには、その原本の全てについての正確なコピーが必要となる。要旨をメモする場合には、原本の内容を正確に写すことは困難であるし、証人尋問の過程において調書の記載の言い回しなど微細な部分が問題となることもおうおうにしてあるし、また調書の体裁や形状、筆跡、印影などが問題となることも少なくないのである。したがって、単に閲覧を許可するだけでは証拠開示の目的を果たしたということは出来ないのであり、謄写が必要である。
五 このように、本件証拠開示は被告人の防御にとって特に必要性の大きいものである。これに対して、開示によって予想される弊害は全くないといってよい。ところが、検察官は、弁護人の口頭での要請に対して、前記の通り、被告人の供述調書の閲覧は認めたものの謄写を拒否し、留置関係書類については閲覧すら認めるに至っていない。
本件供述調書等の開示は有効・適切な証人尋問等のために必要なのであって、事後の開示では無意味である。また、事後の開示によって再度の証人尋問を要するような事態にもなりかねないのであって、訴訟の効率的な運営という観点からも好ましくない。
六 開示を受けた供述調書等の内容を吟味し、証人尋問の準備をするためには少なくとも七日間を要する。
よって、申立の趣旨記載の通りの証拠開示を求める。
以上