2007524

最高裁判所 御中

基本事件:東京地方裁判所平成19年刑(わ)第1085

       傷害

       被告人 ○○○

 

                                    弁護人 高    野     隆

特別抗告申立書

東京地方裁判所刑事第14部所属裁判官の保釈却下決定に対し、弁護人は準抗告を申し立てたが、同裁判所刑事第6部は平成19518日付でこれを棄却する決定をした。同決定に対し次の理由により、特別抗告を申し立てる。

 

抗告の理由

第1 刑事訴訟法892号は憲法34条に反する

東京地裁刑事14部の裁判官は○○氏には傷害の前科があるので、刑事訴訟法892号に該当するとして保釈請求を却下した。弁護人は、準抗告審において、同号は何人も「正当な理由」がなければ拘禁されない旨を定めた憲法34条に違反すると主張したが、原決定は、弁護人の主張を退け、本号は憲法34条に違反しないとした。しかし、原決定の合憲判断は憲法34条の解釈を誤ったものである。以下に述べるとおり、本号はいかなる意味においても憲法34条が定める「正当な理由」とはならない。

1 再犯防止のための拘禁

身体の拘束は我々が憲法によって保障されている人身の自由に対する最も強力な制約である。刑訴法892号は一定以上の法定刑に該当する罪を犯した前科のある人から一律に保釈の権利を剥奪する。それはなぜなのか。本号の立法経緯に照らせば、この問に対する答えは明白である。本号は重罪の前科がある者の拘禁を継続することによって彼らの再犯を防止して社会不安を除去しようとしたのである。

昭和23年春、連合国軍総司令部政治部(GHQ GS)は、新刑事訴訟法の制定のために3週間にわたって連日委員会を開催した(最高裁判所事務総局刑事局『新刑事訴訟法制定資料』(1952)、98頁以下)。委員会にはGSの代表者と日本政府及び法曹界の代表者が集まり、新しい刑事訴訟法を巡る未解決の問題についての討論が行われた。日本政府が作成した法案に対してGHQ側が問題点を列挙して改善提案を附記した「プロブレム・シート」を用意して、それに基づいて議論が進められた。保釈については次のような議論が行われた。総司令部のマイヤース(Howard Meyers)は「プロレム・シート」第70問(2)に基づいて、「81[1]は保釈の権利につき厳しすぎる制限を課してはいないか。」との発問をし、その理由として、

改正案においては81条は事実上比較的軽い罪の被告人に対してのみ保釈の権利を認めている。保釈の請求は次の理由ある場合にのみ拒否されうるとしたい。

(1) 被告人が保釈されれば他の犯罪を犯すおそれのあるとき。

(2) 被告人が公判期日に出頭しないおそれのあるとき。

と述べている。この中で特筆すべきは、「被告人が保釈されれば他の犯罪を犯すおそれのあるとき」という一文である。ここからは、GSの立法担当官が保釈を制限しうる事由として再犯の可能性を予定していたこと、それが保釈の制限を正当化する根拠足りうると考えていたこと、が明らかになる。そして、この点は最高裁判所事務総局刑事局が指摘するところでもある[2]。つまり、立法担当者は、刑事訴訟法892号に予防拘禁という法意を含めていたのである。

このような起草者の意図は、初期の学説にも反映している。安村和雄は本号の立法趣旨についてこう解説している。

本号は、前に必ずしも軽微とはいえない罪につき有罪の宣告を受けた場合を「権利保釈」の適用から除外しているのであって、一方において前号と同様社会不安の除去及び身柄の確保を重視するとともに、三号と同様保釈中に再犯を犯すおそれあることをも考慮していると見てよいであろう(安村和雄「保釈及び勾留の執行停止等」団藤重光編『法律實務講座 刑事編 第二巻 總則(2)』(有斐閣、1953281-282頁。傍点は引用者。他に同旨の説明をするものとして、滝川幸辰他『新刑事訴訟法解説』(大学書房1948)、144頁)。

本号はまさに予防拘禁を目的としていたのであって、重罪の前科がある者が刑事訴追を受けたときは無罪の推定を受ける権利は否定され、社会にとっての危険分子として隔離されるべきであるとしたのである。

後述のように、最近の学説は本号を予防拘禁の規定とは考えずに、「定型的に保証金では出頭を確保し得ない場合」(伊藤栄樹他『注釈刑事訴訟法(新版)(第2巻)』(立花書房1998)、109頁[河上和雄])を定めたものであると理解している。立法者の意図とは別の次元で法の合理性を説明しようというのである。無論、立法事実の変化によって法の合理性を支える論拠が変遷すること自体は、必ずしも否定しえない[3]。しかし、保釈に関してこのように立法の趣旨を読み替えるような立法事実の変化は存しない。とするならば、現行の法律を解釈するに当たっても、立法者の意思は当然に尊重されるべきである。我々は国会を唯一の立法機関として掲げているのだから(憲法41条)、国会において承認された立法者の意思こそが法律の本来の趣旨なのである。法律の合憲性を保つことを目的として立法者の意思を捻じ曲げた解釈を行うことは、国民主権の原理と正面から抵触関係に立つことになる。国会は、刑事訴訟法892号を、「重罪前科者の再犯防止」という趣旨で立法したのであって、「定型的に保証金では出頭を確保し得ない」として立法したのではない。

憲法34条は「正当な理由がなければ、拘禁され」ないと明文で定めている。英文憲法によればそれはadequate causeであり、十分な正当化根拠がなければ国家は個人を身体拘束することができないということを意味する。つまり、刑事訴追を受けた者の身柄を拘束するためには、その目的に合理性が認められるだけでは足りず、他の方法ではその目的が実現できないことが証拠によって示されなければならないのである。

かつて一定以上の法定刑のある罪について有罪判決を受けたことがある者は、類型的に再犯を行う可能性が高いという本号の趣旨は、憲法34条の「正当な理由」たりえない。刑事訴追を受けた者には無罪の推定を受ける権利がる。重罪の前科があるというだけでこの権利を否定する合理性は全くない。また、具体的な根拠もなしに単に重罪の前科があるというだけで、再犯の蓋然性を肯定することにも合理性がない。個人の尊厳と自由に最大の価値を置く日本国憲法の下において(憲法12条、13条)、予防拘禁が「正当な理由」による拘禁となることはありえないのである。

2 保釈保証金では出頭を確保できない被告人の拘禁

本号の立法趣旨として、重罪の前科がある被告人は「保釈保証金の担保によっては逃亡を防止することができないと定型的に考えられたためである」という説明をする人がいる(例えば、藤永孝治他編『大コンメンタール刑事訴訟法(第2巻)』(青林書院1994)、161頁[川上拓一];伊藤栄樹他・前掲、109頁)。未決勾留は逃亡又は罪証隠滅の防止を目的として被疑者又は被告人の居住を監獄内に限定するものであり、未決拘禁者は逃亡又は罪証隠滅の防止の目的のために必要かつ合理的な範囲において身体拘束その他の制約を受ける、というのが最高裁判所の一貫した立場である(最大判昭和58622民集37-5-793)。つまり、未決拘禁が正当化されるのは、「逃亡又は罪証隠滅の防止」という2つの目的を達成する範囲に限られるのである。上記の見解は、本号の立法目的を最高裁が是認する範囲内のものとして説明しようとするものである。しかし、前述のように、この見解は、刑事訴訟法を制定した立法者の意思を無視するものであり、司法権の名による立法行為であって採用できないものである。

しかも、この学説自体に合理性が認められない。この学説は、891号(重罪の訴追)、2号(重罪の前科)、3号(重罪の常習性)を統一的に説明しようとする。すなわち、これらの者は、訴追された事実について有罪判決を受けた場合に厳しい刑罰を受けることが予想されるので、それを避けるために保釈保証金の没取を意に介することなく所在不明となるおそれがとりわけ強いので、保釈保証金では出頭を確保することができないというのである(木谷明「権利保釈の除外事由、勾留更新回数制限除外事由としての常習性の意義及びその認定方法」新関雅夫他『増補令状基本問題(下)』(判例時報社1996)、31頁)。

要するに、この学説は「有罪なら重い刑を受けるという見通しは不出頭の蓋然性を高める」という推論に依拠しているのである。この推論は正しいか。これに答えることは困難なことではない。保釈を許可された人とその後公判に出頭しなかった人の訴追内容や前科に関するデータを比較すればよい。毎年の司法統計年報は保釈人員と保釈取消し人員の総数のデータを公表しているが、彼らの訴追内容や前科関係のデータは公表されていない。そのために、この推論が正しいのかどうかについてわが国のデータに基づいて実証的に議論することが妨げられてきたのである。そうであるにもかかわらず、この推論はひとつの「公理」のように実務を支配してきた。

しかし、海外においてはこの推論に関する実証的な研究が既に行われており、しかも、その答は明白で疑問の余地がない。

シカゴ大学のハンス・ザイセル教授は、1971年のニューヨーク市における重罪逮捕者の無作為抽出サンプル2000人のデータに基づいて調査を行った。その結果によると、最も重い犯罪であるA級重罪で訴追された者には不出頭者は1人もおらず、また不出頭者全体の3分の2は、前科前歴がなく、かつ最低級(D級またはE級)の訴追を受けている者である。前科や前歴との関係についてのデータを挙げると、不出頭者の中にしめる受刑歴のある者の割合は4%に過ぎないのに対して、前歴のない者と逮捕歴だけの者の割合は82%に達しているHans Zeisel, The Limits of Law Enforcement (University of Chicago Press, 1982), pp 201-227)。要するに、重罪の訴追や重罪の前科のために有罪となれば重い刑が予想されるという事態は、決して不出頭率を高めない、それどころか、むしろ、軽い刑が予想される場合の方が不出頭率を高めるのである。

ザイセルの研究は最近の統計によっても裏付けられている。2002年に全米75位までの規模のカウンティで訴追された33,000人余りの被告人のデータによると、暴力犯、財産犯、薬物犯、秩序犯[4]で訴追され保釈された者のうち、公判への不出頭の割合が最も高いのは薬物犯(29%)であり、次いで財産犯(21%)、秩序犯(19%)、そして暴力犯(12%)の順である。暴力犯について見てみると、殺人で訴追された者の不出頭率は0%、強姦が9%である(Burau of Justice Statistics, Felony Defendants in Large Urban Counties, 2002 (U.S. Department of Justice, 2006), p 21.)。このデータも、有罪となった場合の処罰が重いことは、不出頭率を高めるのではなく、低めることを示している。ザイセルはその理由を次のように説明している。

これらの保釈破り(bail jumpers)は、全般的に、軽い罪で訴追され、かつ、前科がないかまたは軽い前科があるに過ぎない。したがって、彼らは裁判の結果に対する恐れが小さい。最悪の場合でも短期の拘禁刑に過ぎない。すなわち、保釈破りというのは、係属中の刑事裁判の結果が恐ろしすぎることよるのではなく、むしろ、逃亡の結果が取るに足らないことによるのである。Zeisel, supra, p217.

重罪の前科がある者は有罪の場合に厳しい刑罰が予想されるので、それを免れるために保釈保証金の没取を意に介することなく逃亡するという892号の説明には、全く合理的な根拠がないのである。むしろ、同号はそれ以外の被告人よりも公判に出頭する蓋然性が高い(逃亡の危険が少ない)被告人を拘禁しているのである。同号は不必要な拘禁を日常的に生み出している。これ以上に不条理な法律があるだろうか。

3 権利保釈の除外事由を類型的に判断することの不当性

被告人の公判廷への出頭確保が困難か否かを正確に誤りなく判断できる類型的な指標はいまのところ発見されていない。「重罪の訴追」「重罪の前科」「重罪の常習性」が信頼できる指標となり得ないことは前述の通りである。

現在のわれわれは個別具体的な事情を丁寧に検討して、被告人の行動を予測するしかないのであり、予測が困難なときには保釈を許可すべきである。「逃亡するかもしれない」という理由で被告人を拘禁することは許されないのである。それぞれの事件、それぞれの被告人において、可能な限り具体的事実に基いて判断されるべきである。どのような被告人が、どのような被疑事実で訴追され、またいかなる態様・程度の被疑事実なのか、被告人の体調や経済状況はどうか、どのような家族と暮らしているのか、子供はいるのか、年老いた両親はいるのか、そのような状況を考慮した上で、当該被告人に公判廷への出頭を期待できるか否かが真に明らかになるのである。また、斟酌しなければならないのは、保釈下における逃亡が被告人に与える非常に重いサンクションである。それは被告人にとって容易に捻出し難い額の保釈金の没収に留まらない。自らの住居や家族の下での安住の生活を捨て、常に官憲や隣人の目を気にして生活を送らねばならず、あらゆる行動を制約されることになる。そして、再び拘束された後には裁判における決定的に厳しい判断を覚悟せねばならないのである。だからこそ、保釈下において逃亡する者はほとんど存在しないのである。

○○氏が刑事訴訟法892号に該当するのは、平成16年の刑法改正によって傷害罪の法定刑が10年以下の懲役から15年以下の懲役に引き上げられたことに起因する。平成16年刑法改正以前は、傷害罪の法定刑は10年以下の懲役又は30万円以下の罰金であり、刑事訴訟法892号には該当していなかった。しかし、傷害罪には依然として罰金刑が定められているのであり、「有罪の場合に重い刑が予想される」と言う前提が成り立たないのである。

ちなみに、平成16年の刑法改正によって権利保釈が認められなくなる被告人の数は倍増した。平成17年度司法統計年報より概算するだけでも、傷害罪の5743人が新たに権利保釈の除外事由の対象となる。これは、権利保釈の除外事由に該当する罪の終局総人数から傷害罪の人数を減じた5997人(放火罪の513人、往来妨害罪の11人、わいせつ姦淫及び重婚の罪の2371人、賄賂の罪の126人、殺人の罪の836人、略取及び誘拐の罪の70人、強盗の罪の984人、強盗致死傷の罪の1086人)とほぼ同数であり、平成16年の刑法改正によって権利保釈が認められない被告人の数は実に倍増したことになる。

従来の保釈制度の下では保釈を許可された者で後に保釈を取消されたのは年間僅か29人である。これだけの過剰なまでの実効性を挙げながら、なお権利保釈を5000人もの被告人から保釈される権利を奪うことには、如何なる正当性も認められないのは明白である。

第2 原決定は条約遵守義務を定めた憲法982項に違反する

原決定は、刑訴法892号が市民的及び政治的権利に関する国際規約93項に反するとは解されないと述べたが、これは同条約の解釈を誤り、国際的に通用すべき多国間条約の条項を独断的恣意的に矮小化したものであって、条約及び国際法規の誠実遵守を定めた憲法982項に違反する。

ヨーロッパ人権裁判所は、2000年と2001年に相次いで、日本の刑訴法892号と類似のイギリスの法律をヨーロッパ人権条約53項に違反するとの判決を下しているCaballero v. The United Kingdom, (32819/96) [2000] ECHR 52 (8 February 2000), S.B.C. v. The United Kingdom (39360/98) [2001] ECHR 396 (19 June 2001))。事案は次のようなものである。イギリスの1994年刑事司法及び公共秩序法第25(Section 25 of the Criminal Justice and Public Order Act 1994)は、殺人、殺人未遂、強姦、強姦未遂の罪で有罪判決を受けた者が再度これらの罪によって起訴されたときには、保釈は許可されない旨を規定していた。キャバレロは、1987年に故殺罪で有罪判決を受け刑の執行を受けたが、1996年に強姦未遂の罪で逮捕され、訴追された。彼の保釈申請は1994年法の適用を受けて却下され、公判の結果強姦未遂について有罪判決を受けた。国内の不服手続終了後に、キャバレロは1994年法がヨーロッパ人権条約53項に違反するとしてヨーロッパ人権裁判所に申立てを行った。ヨーロッパ人権条約53項はこう規定している。

***逮捕又は抑留された者は、裁判官又は司法権を行使することが法律によって認められている他の官憲の面前に速やかに連れて行かれるものとし、妥当な期間内に裁判を受ける権利又は裁判までに釈放される権利を有する。釈放に当たっては、裁判所への出頭が保障されることを条件とすることができる。

ヨーロッパ人権委員会は、殺人等の前科がある者が再度訴追された場合に一律に保釈を否定する1994年法は条約53項に違反すると宣言した。同委員会はその理由を次のように述べている。

裁判官は、被告人本人を直接審問したうえで、無罪推定原則に正当な留意を払いつつ、被告人の自由を尊重するというルールからの逸脱を正当化する、公共の利益に基づく真正な要請が存在するか否かに関する全ての事情を検証しなければならない。これらの事情は釈放申請についての決定の中に提示されなければならない。例えば、被告人の逃亡の危険性は、予想される刑の重さのみに基づいて判定されてはならない。再犯の危険性について言えば、前科は釈放の拒否を正当化する事由としては十分ではない(Caballero v. the United Kingdom, No. 32819/96, Report of the Commission, 30 June 1998, para 43.)。

イギリス政府は委員会の決定の後の手続では条約違反を争わず、人権裁判所は委員会の報告書に基づいて条約違反を宣言した(Caballero v. The United Kingdom, (32819/96) [2000] ECHR 52 (8 February 2000), para. 21; S.B.C. v. The United Kingdom (39360/98) [2001] ECHR 396 (19 June 2001), para.18.

わが国は、EUのメンバーではないから、ヨーロッパ人権裁判所の判例に従う理由はないし、ヨーロッパ人権条約に拘束されることもない。しかし、ヨーロッパ人権条約53項とわが国が批准した国際人権規約93項とは同趣旨の規定である。ヨーロッパ27カ国を拘束するその解釈は、国際人権規約の解釈としても十分に説得的であり、参照されるべきである。わが国の判例も、例えば、徳島裁平成8315日判決は、ヨーロッパ人権裁判所の判例について、ウィーン条約313項(c)が言う「当事国の間の関係において適用される国際法の関連規則」に直接該当はしないが、国際人権規約の「解釈に際して一定の比重を有することは認められよう」と述べている(徳島地判平8315判時1597-115123頁)。また、高松高裁平成91125日判決も、ヨーロッパ人権条約が国際人権規約草案を元に作成されたという経緯などに鑑みて、ヨーロッパ人権裁判所の判例は、国際人権規約の「解釈に際して指針とすることができるというべきである」と判示している(高松高判平91125判時1653-117120頁)。

このヨーロッパ人権裁判所の判例を指針とした上で、我が国の法令を踏まえて国際人権規約93項を解釈するならば、被告人の逃亡の危険性や罪証隠滅のおそれ、さらには再犯の危険性についても、被告人の前科及び予想される刑の重みのみに基づいて判断されてはならないことになろう。そして、この解釈には先に検討したように法社会学による実証的な裏づけが存するのである。

日本の刑訴法892号は、被告人の前科のみに基づき、画一的に保釈を拒否するものであり、したがって、市民的及び政治的権利に関する国際規約93項に反するというべきである。何ら説得的な理由もあげることもなく、条約違反がないと決め付ける原決定は、わが国が批准した条約や国際法規の誠実遵守義務を定めた憲法982項に違反するのである。

以上



[1] 日本政府の刑事訴訟法81条の草案は、以下の通りである。

「保釈の請求があったときは、左の場合を除いてこれを許さなければならない。

一 被告人が死刑又は無期若しくは長期十年以上の懲役若しくは禁錮にあたる罪を犯したものであるとき

二 被告人が、常習として同種の罪を犯したものであるとき

三 被告人を勾留しておかなければ、審判の迅速性を期することが著しく困難と認められるとき」

[2] 「この勧告は、現行法八九条に具体化されているが、再犯の虞が権利保釈の除外事由を定める一つの標準とされていることは注意すべきである」と指摘されている。前掲資料100

[3] 一例として、最判平成元年120日・刑集4311頁(公衆浴場の距離制限について、現代に至って、公衆浴場の経営が困難になっていることを、合憲性を支える立法事実として利用している。)。

[4] 銃の所持や交通違反などの各種取締法違反の罪。