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刑事司法改革の指針となる、内外の判例、国連関係文書等 石井対高野:
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議決書 |
| 〒850-8560 長崎県長崎市万才町9番33号(長崎地方検察庁内) 懲戒請求人石井政治 |
| 〒330-0063 埼玉県さいたま市浦和区高砂3丁目5番7号 高砂建物ビル502 菊地綜合法律事務所 平成13年(綱)第11号懲戒請求事件 被調査人高野隆 (登録番号18057) |
| 〒330-0064 埼玉県さいたま市浦和区岸町7丁目12番4号 ニチモビル503 池本法律事務所 上記代理人 弁護士池本誠司 〒330-0064 埼玉県さいたま市浦和区岸町7丁目12番4号 ニチモビル501 岡村茂樹法律事務所 上記代理人 弁護士岡村茂樹 〒330-0063 埼玉県さいたま市浦和区高砂2丁目2番6号1004 海老原法律事務所 上記代理人 弁護士海老原夕美 〒160-0006 東京都新宿区舟町1丁目12番地 MKビル6階 仲田法律事務所 上記代理人 弁護士仲田信範 〒l46-0094 東京都大田区東矢ロ1-4-6 プルードコート池上 八木法律事務所 上記代理人 弁護士八木由里 〒330-0063 埼玉県さいたま市浦和区高砂3丁目7番1号 浦和法律事務所 金子ビル3階 平成13年(綱)第1'2号懲戒請求事件 被調査人村木一郎 (登録番号21637) 〒330-0063 埼玉県さいたま市浦和区高砂4丁目3番21号 三協ビル4階 萩原・町田法律事務所 上記代理人 弁護士萩原猛 〒330_0064 埼玉県さいたま市浦和区岸町7丁目12番9号 浦和シティ法律事務所 上記代理人 弁護士中山福二 〒330_0063 埼玉県さいたま市浦和区高砂2丁目6番11号 藤屋ビル2階 松下法律事務所 上記代理人 弁護士松下祐典 |
主文 |
| 各被調査人をいずれも懲戒手続に付さないことを相当とする。 |
理由 |
(1)被調査人である弁護士高野隆(以下「高野弁護士」という。)は、本件懲戒請求当時さいたま地方裁判所に公判係属中の八木茂に対する殺人、殺人未遂等被告事件の弁護人、同村木一郎(以下「村木弁護士」という。)は、本件懲戒請求当時同裁判所に公判係属中の武まゆみに対する殺人、殺人未遂等被告事件の弁護人であり、被告人八木茂(以下「八木」という。)及び同武まゆみ(以下「武」という。)につき、平成12年4月15目、同年5月8日及び同月30日、さいたま地方裁判所裁判官から、それぞれ第1回公判期日(後に平成13年3月30日と指定された。)に至るまで刑事訴訟法39条1項に規定する者以外の者との接見及び文書の授受を禁止する旨の決定がなされていた(甲1、2及び3号証)。
(2)高野、村木弁護士は、両被告人がそれぞれ一方は事実を否認し、一方は事実を自白しており、利害相反する関係にあることを承知していた。
(3)村木弁護士は、平成12年5月ころから同年7月ころまでの間、前後2回にわたり、武が勾留されている東松山警察署において、同人と接見した際、同人から、「私は本当に、八木さんに死んでほしくない、生きていてほしいから自白したのだということが、わかってもらいたい。」、「『私は殺そうと思っていないが、保険をかけていて、八木さんの命令でやっていることだけど、目的が、死なせて保険をもらうということだから、殺意はあったということです』という内容の調書を取った。サインした。」、「高額の弁護料を請求されちゃって、これから無罪なんて勝ち取るなんてできないのに。だいいち、弁護士に財産全部を取られてしまうのではないか。そしたら、今後、外に出たって無一文じやないか。大丈夫なのだろうか。弁護料より自白する気があるんだったら、弁護士は国選に切りかえて弁償に使った方がいいと思うけどな。」、「八木さん、どんどん悪い方に行ってる気がするよ。本当に、弁護士に全部すいとられちゃうよ。このまま黙秘だと財産はなくなるは、刑は重いはじゃ、目もあてられないよ。早く外に出ようと思ったら、少しでも刑を軽くすることを考えて欲しいな。」、「私が自白しなくても、4人とも自白しなくても、有罪が間違いないというくらい証拠も証人もそろっているし、おまけに川村という証拠がいる。絶対に勝てない裁判を長い年月かけてやっても、刑は重くなるし、年をとるだけだよ。少しでも若いうちに出たいなら、刑を軽くするしかないんだ。それには、罪を認めて自白調書を作り、謝罪、弁償をするしか方法がないと思うよ。」
「私はマスターのために自白したのに、私が自白すれば、マスターも諦めて自白すると思っていたのに、そうすればせめて死刑だけは免れると思ったのに。求刑が無期なら、自白していれぱ、有期の判決になるかもしれないのに。そうすれば、生きて外に出られる可能性が出てくるのに。本当にこのままいったらヤバイゾ。」、「佐藤の件を立件されたら、本当にヤバイのだろうに。大丈夫かな?あ一あ結局、私がしゃべると八木さんを追いこむことになっちゃうんだよナ。」、
「検察は、佐藤修一の件も立件に向けているようです。」、
「なんとか反省しているように見てもらって、刑を軽くしてほしいと思います。そのためには、やはり自白するしかないと思うのです。お願い。生きて外に出て欲しいから、私の気持ちを分かってください。」
旨の記載を含む共犯者である八木宛のノート合計4冊を、同人に交付するよう依頼を受け、これを受け取った上、そのころ、高野弁護士に対し、武の依頼内容を告げた上、同ノート合計4冊又はその写し(甲6号証)を交付した。
(4)上記依頼を受けた高野弁護士は、平成12年6月ころから8月ころまでの間、八木が勾留されている本庄警察署において、同人に対し、上記ノート合計4冊の写しを差し入れて交付した。
(5)高野弁護士は、平成12年6月ころから同年8月ころの間、本庄警察署において、八木と接見した際、同人から、
「私を、死刑にしたいのは、まゆみ、ではないか。なんでも、私の命令みたいに書いてあるが、武まゆみの意志ではないのか」、
「私は命令という言葉も、行動も好きではない。(八木さんの、命令でやっていることだけど)などとノート又検事調書に書かないでもらいたい。」、
「武もひどいことを言ってくれるよ。何でも八木さんがやった。私の計画ということだけど、裁判で私の証人に出た時、私の前で、八木さんの計画です、調書に書いてある通りですと、言えるのか?武に、八木の計画などといわれるとは思わなかった。」、
「結婚のことは頭に入れてある。裁判の締果次第で返事をしたい。関昭さん、川村さんの事件は、私は無罪を主張する。佐藤さんの件は、出てないが無実だ。武も、関さんが病死であることを、主張した方がいい。関さんは、自分でも、沢山の薬を飲んでいること、検事には、俺が、関さんの家(アパート)に薬を沢山持っていったと話してある。関さんの事件は殺人罪ではないと信じている。」、
「(佐藤さんの件を立件されたら、本当にヤバイのだろうに、大丈夫かな?あ一あ結局私がしゃべると八木さんを追込ことになっちゃんだよな)などとふざけたことを書いているが、武は、私を追込むのが楽しそうだ。いつか仕返しでもされないよう、どんどん刑事にも検事にも、作り話を言って下さい。」、
「武城の殿の首を、取られないよう、守ってもらいたい。城は殿の首を取られたら、今までの歴史でも、城は陥落する。殿の首が飛んだら以前には、戻ることはできない。姫と殿で争っていたのでは、敵人に攻められる。今の姫は敵人の味方だ。姫は殿を守れないか。このまま突入したら、間違いなく城は陥落する。陥落したら終わりだ。平行線も交合う事(原文ママ)もない。雪だるまも溶けて崩れ、水点(原文ママ)になってどこかに流れて行ってしまう。俺は城を守って姫の帰りを待ちたい。また一緒に仕事ができるように、仕事も立直したい。よく考えて下さい。」
旨の記載を含む共犯者である武宛てのノートを、同人に交付するよう依頼を受け、これを受け取った上、そのころ、村木弁護士に対し、八木の依頼内容を告げた上、上記ノート又はその写し(甲7号証)を交付した。
(6)上記依頼を受けた村木弁護士は、平成1弓年8月ころ、東松山警察署において、武に対し、上記ノートの写しを差し入れて交付した。
(7)なお、被告人両名にっいては、平成12年4月15日付けで公正証書原本不実記載・同行使被告事件により、同年5月4日付で殺人未遂被告事件により、同月30日付で殺人事件被告事件により、それぞれ浦和(当時)地方裁判所に公訴提起されていた。
(1)前記1の事実については、弁護人の接見交通権を悪用して、相互に刑事訴訟法第39条第1項に規定する者以外の者である八木及び武の間で手紙を授受させたものであって、まずは、前記接見等禁止決定を潜脱する違法な行為に該当する。
(2)上記(1)に関しては、接見交通権ないし秘密交通権との関連が若干問題となるが、そもそも接見交通権ないし秘密交通権は、被疑者被告人とその弁護人間においてのみ保障されるものであって、特定の被疑者被告人と別の被疑者被告人間における文書の授受を保障するものでないことは言うまでもない。これは、特定の被疑者被告人と別の被疑者被告人との間に、それぞれの弁護人が介在する場合であっても全く同様であり、高野弁護士が接見交通権ないし秘密交通権を有するのは、自己の弁護する八木との間であり、村木弁護士の弁護する武との間ではなく、また、村木弁護士が接見交通権ないし秘密交通権を有するのは、自己の弁護する武との間である。
(3)しかるに、武記載のノートは、村木弁護士が自らは秘密交通権を有していなかった八木に対して差し入れることを企図して高野弁護士に交付し、高野弁護士は村木弁護士の意図を知りながらこれらノートを八木に差し入れたのであるから、高野弁護士の八木に対する差し入れ行為は、秘密交通権の行使ではなく、村木弁護士の八木に対する差し入れという秘密交通権を逸脱した行為に加担したものである。同様に、八木記載のノートは、高野弁護士が、自らは秘密交通権を有していなかった武に対して差し入れることを企図して村木弁護士に交付し、村木弁護士は高野弁護士の意図を知りながらこのノートを武に差し入れたのであるから、村木弁護士の武に対する差し入れ行為も、秘密交通権の行使ではなく、高野弁護士の武に対する差し入れという秘密交通権を逸脱した接見等禁止決定潜脱行為に加担したものである。
(1)実質的にも、本件で授受された書面、特に八木の武に宛てた書面は、八木が、その共犯者である武に対して、検察官による取調べや公判廷における証人尋問に際して、自己に不利益な供述をしないよう働きかける内容を含むものである。
(2)そして、八木及び武に接見等の禁止が付されていた趣旨は、同人らが共犯関係にあることから、口裏合わせ、威追及び否認のしょうようといった相互の意思疎通を手段としてなされる罪証隠滅工作の防止を図ることにあるところ、上記のとおり、各弁護人によって敢行された接見等禁止決定を潜脱する行為の結果、八木が、武の自供の過程及びその内容等を知って、同人に自供を翻して罪証隠滅をするよう指示したノート又はその写しを送りつけることが可能になったことは明らかであって、高野弁護士及び村木弁護士の接見等禁止決定潜脱行為により、罪証隠滅の現実的おそれが生じたものと認められるのである。(甲4号証)
(3)しかも、上記高野弁護士及び村木弁護士は、法律家として上記各文書の内容を検討しているものであって、上記各文書を一読するだけでも、八木及び武がそれぞれ、一方は自白し、一方は否認しており、両名が決定的に利益相反関係にあること、さらに八木が書いたノートは武に否認をしょうようする内容であることは一目瞭然のはずである。にもかかわらず、両弁護士は、この事情を知りつつ同文書を八木及び武に授受させたのであって、かかる行為は、弁護人自ら偽証及び虚偽の陳述をしょうようするに等しく、偽証及び虚偽の陳述のそそのかしを禁じた平成2年3月2日日本弁護士連合会臨時総会決議に係る弁護士倫理第54条にも実質的に違反する行為である。
上記のとおり、高野弁護士及び村木弁護士の前記2,3記載の各行為は、いずれも、社会正義の実現を使命とし、そのために誠実にその職務を行い、社会秩序の維持に努めるべき弁護士の責務に違反するものであると同時に、弁護士の品位を失うべき非行であると認められ、弁護士法第56条第1項に定める懲戒事由に該当することは明白である。
よって、請求人は、被調査人である高野弁護士及び村木弁護士の法秩序を無視した行動を看過し難く、ここに貴会の厳正なる処分を求めるため、弁護士法第58条第1項に基づき、懲戒することを求める次第である。
各被調査人は、答弁書を提出し、次のとおり答弁した。
(1)は、認める。
(2)は、否認する。
(3)に関しては、平成12年6月はじめころ甲6号証の武まゆみノートの1冊目から3冊目までの写しを、同年7月中旬ころ同4冊目のノートの写しを村木弁護士から入手したことは認める。ノートの中に懲戒請求事実に引用された部分の記載のあることは認める。村木弁護士からノートの写しを八木宛に差し入れて欲しいと言われたことは認める。ノートが「八木宛のノート」であることは否認する。その余は不知。なお、武のノートは同人の日記帳ないし備忘録である。佐久間検事にノートをコピーさせた後に、八木にも見せることを意図して村木弁護士に宅下げをした。そして、それは八木が否認のままで起訴されたら死刑あるいは無期懲役になるのでそれを救うためという佐久間検事の示唆に基づいたものである。従って、ノートに八木宛のメッセージが含まれているのは、ノートが日記帳ないし備忘録であるからである。また、佐久間検事がそのノートをコピーしたことは、重要証人の供述証拠の開示に等しいものである。交付の際に、村木弁護士は、高野弁護士の判断で差し入れなくともよいと付け加えた。
(4)は認める。なお最初の3冊は、平成12年7月7日、4冊目は同月22日である。また、高野弁護士は、八木に同人のコメントを文書にしてもらうために差し入れた。
(5)について、高野弁護士が甲7号証を宅下げしたことは認める。
なお、甲7号証の性質についてはメモである。このメモの中に引用する部分の記載が含まれていることは認める。そして、このメモは、形式や内容から明らかなように高野弁護士宛に書かれたものであり、『武宛のノート」であることは否認する。このメモを高野弁護士が村木弁護士に交付したことは認めるが、その際に八木から武に交付するよう依頼を受けたこと、それを村木弁護士に武に交付するように依頼したことは否認する。このメモが村木弁護士を通じて武に差し入れられることを八木は希望していたが、それはお願いでありこのメモ自体が武宛の親書としての性格を持つものではない。高野弁護士は、村木弁護士に「これが八木の見解です。」と述べたが、メモを武に差し入れて欲しいという話はしなかった。また、村木弁護士から「武に差し入れる」との話もなかった。
(6)は、不知である。
(7)は、認める。
(1)の各被調査人の行為が、接見等禁止決定潜脱行為に該当することは、争う。
(2)(3)は、否認ないし争う。特に、接見交通権ないし秘密交通権との関連は、すべて争う。接見禁止下でも、あるいはであればこそより接見交通権ないし秘密交通権は保護され、そしてその保障の担保として弁護人の裁量は尊重される。
否認ないし争う。
1-武ノートと八木メモ(以下本件文書という)は、供述書であり罪証隠滅を図る文書ではない。「罪証隠滅の現実的おそれが生じた」ことなど全くない。
2-本件文書は、「虚偽」の供述をしょうようする文書ではない。
3-各弁護人は、本件文書の授受をそれぞれの意向をそのまま受けて仲介」をしたものではない。
4-本件文書は、「弁護活動上必要」なものと判断をしたものである。
なお、法律上の主張に関しては、「第3各被調査人の法律上の主張」に述べる。
従って、被調査人の行為は、偽証及び虚偽の陳述のそそのかしを禁じた平成2年3月2日日本弁護士連合会臨時総会決議に係る弁護士倫理第54条に違反するものではない。
被調査人の各行為は、弁護士の責務に合致こそすれ、それに違反するものでも、弁護士の品位を失うべき非行でもなく、弁護士法第56条第1項に定める懲戒事由には該当しない。
(1)は、認める。
(2)は、不知。
(3)の村木弁護士が高野弁護士に武のノート合計4冊を交付したことは否認する。交付したのはノートの写しである。その余は認める。武は、八木の自白を促すために自ら自白することを決意した。そのことを村木弁護士も賛成をした。そのような経緯から武の要請を受けて武のノートの宅下げをした。但し、村木弁護士は、武に対して、そのノートを八木の弁護人である高野弁護士が八木に渡すかどうかは高野弁護士の判断次第であることを説明した。村木弁護士はそのノートを検討の上、問題がないと考えて、高野弁護士に渡した。その際に、武の要望は伝えたが、実際に渡すかどうかは高野弁護士の判断に任せることを告げた。
(4)は、不知。
(5)の高野弁護士が甲7号証を宅下げしたことは認める。また、ノートの写しに引用する部分の記載が含まれていることは認める。しかし、高野弁護士が村木弁護士に八木の依頼内容を告げたことは否認する。高野弁護士から八木からのメモの写しを受け取った際には、同弁護士から武に渡して欲しいとの要請は全く受けていない。
(6)の村木弁護士が高野弁護士から依頼を受けたとする点は否認する。しかし、ノートの写しを武に差し入れ交付したことは認める。なお、日付は、8月8日である。村木弁護士は、それを検討をして、高野弁護士から要請されたからではなく、武の思いを八木は全く受け入れていないことを自覚させる意味で村木弁護士自身の判断で敢えて差し入れることとした。また、差し入れた際にも八木の態度を知っても自白を撤回することはいけないと述べた。
(7)の被告人両名の公訴提起について認める。また、検察官は、論告求刑に於いて武が自白をして事案の解明に寄与したことを評価している。
(1)の各被調査人の行為が、接見等禁止決定潜脱行為に該当することは、争う。
(2)(3)は、否認ないし争う。特に、接見交通権ないし秘密交通権との関連は、すべて争う。接見禁止下でも、あるいはであればこそより接見交通権ないし秘密交通権は保護され、そしてその保障の担保として弁護人の裁量は尊重される。
否認ないし争う。
1-本件「文書」は、供述書であり罪証隠滅を図る文書ではない。
「罪証隠滅の現実的おそれが生じた」ことなど全くない。
2-本件文書は、「虚偽」の供述をしょうようする文書ではない。
3-各弁護人は、本件文書の授受をそれぞれの意向をそのまま受けて「仲介」をしたものではない。
4-本件文書は、「弁護活動上必要」なものと判断をしたものである。
なお、法律上の主張に関しては、「第3各被調査人の法律上の主張」に述べる。
従って、被調査人の行為は、偽証及び虚偽の陳述のそそのかしを禁じた平成2年3月2日日本弁護士連合会臨時総会決議に係る弁護士倫理第54条に違反するものではない。
被調査人の各行為は、弁護士の責務に合致こそすれ、それに違反するものでも、弁護士の品位を失うべき非行でもなく、弁護士法第56条第1項に定める懲戒事由には該当しない。
1. 各被調査人とも法律上の主張として「1-接見等禁止決定と弁護活動」「2-刑事弁護における虚偽の陳述のそそのかし」「3-懲戒請求人の資格」について、準備書面等で同趣旨の主張をしている。そこで、両者の主張を併せ要約すると以下のとおりとなる。
1-第1の非行事実に関して
接見等禁止決定は、弁護活動を制約する効力はない。それは、弁護人と被告人の秘密交通権(刑事訴訟法39条1項)は、被告人の有する弁護人の実質的弁護を受ける権利(憲法34条・37条3項)と不可分一体の権利であって、接見等禁止決定によって秘密交通権が実質的に制限されることとなる解釈は到底許されないからである。
接見等禁止決定の効力の正しい解釈からすれぱ、弁護人が弁護活動のために必要なものだと判断して文書を授受する行為は、刑事訴訟法81条に反するものではない。
2-第2の非行事実
弁護士倫理第54条でいう「虚偽の陳述のそそのかし」について、
まず(1)「虚偽の陳述」とは、弁護士が、虚偽の疑いを抱いているというような認識の状態ではなくて、客観的事実に反していることを確定的に認識している(虚偽であることの故意)を要件とする。特に、弁護士が刑事弁護人になる場合の行為準則として檸能することから、「虚偽の疑い・おそれ」という、あいまい且っ広範な要素を加える解釈はすべきでない。次に、(2)「そそのかし」とは、弁護士自身の行為として何らかの働きかけを行うことが要件である。
『虚偽の陳述のそそのかし』の正しい解釈からすれば、虚偽であることを認識ながらその旨を陳述するよう働きかける行為を言うのであり、本件文書の授受行為においては虚偽の認識もなければ、その旨陳述するよう働きかける行為もないことは明らかである。
3-懲戒請求人の資格
懲戒請求人は、「さいたま地方検察庁次席検事(懲戒請求当時)」として、本件懲戒請求の申し立てをしているが、個人が行政機関の構成員の資格で申し立てることには問題がある。とりわけ、捜査・起訴機関である検察官が、進行中の事件について弁護人の弁護活動について懲戒を申し立てる資格があるかについては疑問がある。なお、各被調査人とも、この点をもっていわゆる門前払いの判断をすることまでは望んでいない。
甲第1〜3号証接見禁止決定書
甲第4,5号証公判経過等報告書
甲第6号証武まゆみ作成ノート
甲第7号証八木茂作成メモ
甲第8〜10号証公判調書
乙第1号証武まゆみ供述調書
乙第2号証論文「刑訴法81条の接見禁止と弁護活動」
乙第3号証季刊刑事弁護2002年夏号(一部)
乙第4号証論文「接見禁止と書類の授受に関する報告書」
丙第1号証各被調査人に対する事情聴取書
丙第2号証八木茂に対する事情聴取書
丙第3号証武まゆみに対する事情聴取書
懲戒請求人が提出した証拠並びに当委員会が懲戒請求人から聴取した結果によれば、次の事実を認定することができる。
(1)被調査人高野弁護士は、本件懲戒請求当時さいたま地方裁判所に公判係属中の八木に対する殺人、殺人未遂等被告事件の弁護人{同村木弁護士は、本件懲戒請求当時同裁判所に公判係属中の武に対する殺人、殺人未遂等被告事件の弁護人であり、被告人八木及び同武につき、平成12年4月15日、同年5月8日及び同月30日、さいたま地方裁判所裁判官から、それぞれ第1回公判期日(後に平成13年3月30日と指定された。)に至るまで刑事訴訟法39条1項に規定する者以外の者との接見及び文書の授受を禁止する旨の決定がなされていた。
(2)高野、村木弁護士は、八木は一貫しては事実を否認し、一方で武は平成12年6月20日以降は、事実を自白したことを相互に認識していた。
(3)村木弁護士は、平成12年5月ころから同年7月ころまでの間、前後2回にわたり、武が勾留されている東松山警察署において、同人と接見した際、同人から、同人が自白をするに至った経緯及び八木にも自白をして欲しい旨の心情を綴った記載を含むノート合計4冊を、八木の自白を促すために交付するよう依頼を受け、ノート合計4冊を平成12年5月22日前後に受け取った。村木弁護士は、武に対して、そのノートを八木の弁護人である高野弁護士が八木に渡すかどうかは高野弁護士の判断次第であることを説明した。
村木弁護士は、それらのノートを検討の上、問題ないと考えて、高野弁護士に対し、武の上記の伝言内容を告げた上、同ノート合計4冊の写し(甲6号証)を、その中の3冊を平成12年6月初めに、残る1冊を同年7月初旬に交付した。
(4)上記依頼を受けた高野弁護士は、平成12年7月7日及び同月22日に、八木が勾留されている本庄警察署において、同人に対し、上記ノート合計4冊の写しを差し入れて交付した。
(5)高野弁護士は、平成12年7月31日、八木から、甲7号証の書面(八木メモ)を受領した。これは、八木から高野弁護士宛の打ち合わせメモの性格を基本的に有するが、その中に、武が自白をしたことをなじり、その翻意を期待する武宛の記載があることは否めない。高野弁護士は、八木メモの写しを平成12年8月8日までに村木弁護士に対して、武に渡されることを希望して交付したが、実際に、渡すかどうかは村木弁護士の判断に委ねられたことが認められる。
(6)八木メモの交付を受けた村木弁護士は、平成12年8月8日東松山警察署において、武に対し、八木メモの写しを差し入れた。その際に、村木弁護士は、「あなたは、本当のことを話して下さい。」と述べている。
(7)なお、武は、平成12年6月20日以降に自白に転じたが、平成12年8月8日に八木メモの写しの差し入れを受けた後にも、その自白を撤回あるいは変化させたことはない。
(1)各被調査人の行為が、弁護人の接見交通権を悪用し、刑事訴訟法第39条第1項に規定する接見等禁止決定を潜脱する違法な行為に該当するとは言えない。
(2)なお、請求事実3(1)でいう「接見交通権ないし秘密交通権は、被疑者被告人とその弁護人間におい下のみ保障されるものであって、特定の被疑者被告人と別の被疑者被告人間における文書の授受を保障するものでないことは言うまでもない。」との主張について検討する。
接見交通権ないし秘密交通権は、被疑者被告人とその弁護人間において、主に保障されるものである。しかし、だからと言って、結果的に弁護人を介した形で特定の被疑者被告人と別の被疑者被告人間における文書の授受がなされたことになったとしても、それが、接見交通権ないし秘密交通権の将外にあると断じることはできない。すなわち、弁護人と被告人の秘密交通権(刑事訴訟法39条1項)は、被告人の有する弁護人の実質的弁護を受ける権利(憲法34条・37条3項)と不可分一体の権利である。弁護人が被告人と文書の授受をすることは、弁護活動の一態様として弁護権の保障の範囲内にあるというべきである。そして、弁護人が被告人のためにその文書をはじめとした情報を活用することもまた、弁護権の保障に含まれるものである。従って、共犯関係にある他の被告人との間で、弁護人を介して文書の授受がなされたとしても、それはそれぞれの弁護人の弁護活動の結果であり、弁護権の範囲内のものである。
(1)弁護士倫理第54条でいう「虚偽の陳述のそそのかし」において、「虚偽の陳述」とは、弁護士が、虚偽の疑いを抱いているというような認識の状態ではなくて、客観的事実に反していることを確定的に認識している(虚偽であることの故意)ことを要件とする。すなわち、「虚偽」とは、客観的真実に反することを言い、弁護士は客観的真実の発見に努め、それに従って行動すべきである(弁護士倫理7条)が、弁護士が真実と信じるものが常に客観的真実に合致するとは限らず、それは主観的真実にとどまらざるを得ない。また、わが国の訴訟制度は、双方当事者が互いに自らの要求を根拠づける主張・立証活動を行い、相手方の主張に対して反論・反証を加え、第三者的裁判機関がその立証資料に基づき判定を下す「対論的訴訟制度」をとっており、そのような制度こそが客観的真実発見の有効な方法であると考えられている。そのような制度の下で、弁護士には、何よりも依頼者の要求を実現するために尽力することが要請されているものであり、その立場は、中立的・第三者的ではありえず、常に「党派的」(partisan)なものとならざるを得ない。(以上、日弁連弁護士倫理に関する委員会編集注釈弁護士倫理201頁)
(2)従って、「虚偽の疑い・おそれ」を弁護士が仮に有していたとしても、それは、「対論的訴訟制度」の過程のものであり、虚偽については客観的事実に反していることの確定的な認識(虚偽であることの故意)を要件とすべきである。懲戒請求人の主張は、つまるところ、共犯関係にある武は事実を自白しているが、一方の八木は事実を争っていることから、武が自白をしている事実を「真実」として、これに反する八木の主張を「虚偽」とするものである。しかし、本件の刑事事件は、武については上訴せずに刑が確定をして服役をしているものの、八木については上訴して現在もなお係争中である。この様に刑事事件としての客観的事実については、現在でさえも未確定であり、ましてや各被調査人の行為がなされたのは、両被告人について捜査・公判中の時点である。かかる場合において、弁護人としては、客観的事実に反していることを確定的に認識していた、つまり虚偽であることの故意を有していたとは到底言えないものである。
仮に、懲戒請求人の解釈に立ったとしても、村木弁護士から高野弁護士を介して八木に差し入れた武のノート4冊の内容は、むしろ八木に自白を促すものであるから、もとより虚偽の陳述のそそのかしには当たらない。
また、高野弁護士から村木弁護士を介して武に差し入れられた八木メモには、前記認定のとおり、武が自白したことをなじり、武に自白の翻意を求める記載がなされており、武がこのメモを読んで自白を維持するか否か動揺したことが同人からの聞き取りによって認めることができるが、高野弁護士は八木メモを武に渡すかどうかの判断を村木弁護士に委ねており、村木弁護士は武に八木メモを差し入れた後、武から助言を求められた際に「本当のことを話して下さい」と答えている。以上の事実からすれば、高野弁護士の行為を「虚偽の陳述のそそのかし」と認定することはできないし、また、村木弁護士の一連の行動からは、武に八木メモを差し入れることによって武が八木から決別する機会になるものと考えていたことが窺われ、武への八木メモの差し入れが虚偽の陳述をそそのかす意図によるものと認めることはできない。
(3)よって、被調査人らの行為は、虚偽の陳述のそそのかしには当たらない。
上記のとおり、高野弁護士及び村木弁護士の前記第1の2,3記載の各行為は、いずれも、弁護士法第56条第1項に定める懲戒事由に該当しないので、主文のとおり議決する。
2003年(平成15年)11月18日
埼玉弁護士会綱紀委員会
委員長赤松岳
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