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ミランダの会が発表した宣言、記者発表、コメントほか 調書コピー漏洩事件についてのコメント (1995.11.27)
一九九五年一一月二三日付の読売新聞・埼玉新聞の報道によると、虚偽有印公文書作成・同行使罪(競売書類の捏造)で浦和地方裁判所に起訴され、公判中の浦和地裁川越支部執行官が、逮捕前に自分の供述調書のコピーを入手していた(八月二一日埼玉県警が同支部を捜索した際、同執行官の机の引き出しから発見)。この供述調書は、六月下旬、同執行官が上福岡市内の競売物件に関する競売入札妨害被疑事件の参考人として、県警の事情聴取を受けた際(入札妨害に協力したのではないかなどと聴かれた)、作成された参考人調書であり、県警はこの事件で暴力団幹部を逮捕し、これをきっかけに競売書類の捏造事件を捜査していた。同支部庶務課長は、暴力団幹部が勾留請求された際、その資料中にあった同執行官の供述調書をコピーし、このコピーを、執行官室内で同執行官に示して同人の行為を確認した。同執行官がコピーを入手した経緯ははっきりしないが、庶務課長が席を外した間に、同執行官が自分でコピーした可能性がある。泉徳治浦和地裁所長は「違法行為があったかどうかを調査するために使ったもので、悪意はなく実害は生じていないが、記録を別の目的で使ったという点では、記録の管理上適切を欠いた行為と言わざるを得ず、遺憾に思っている。」「本人が供述したもので、もともと本人は内容を知っている。証拠の隠滅を図ったものではない。この件については起訴も逮捕もされておらず、実害はなかったことを考えれば結果的に問題はなかった。」と発言した。 わが「ミランダの会」は、本年二月一三日の結成以来、取調べの可視化を目指し、取調べに対する弁護人の立ち会い、及び、弁護人による供述調書の事前確認(事前確認の一方法として供述調書のコピーが弁護人に交付されることを提案している)を要求する運動を推進しているところであるが、ここに上記事件に関して、わが会のコメントを発表する。 刑事訴訟法一九八条は、第三項で被疑者の供述を検察官や警察官が調書に録取することを認めたうえで、第四項において「前項の調書は、これを被疑者に閲覧させ、又は読み聞かせて、誤りがないかどうかを問い、被疑者が増減変更の申立をしたときは、その供述を調書に記載しなければならない」と規定し、さらに、第五項で被疑者には、その理由を問わず、供述調書に対する署名・押印の拒絶権があることを明らかにしている。そして、これらの条項は参考人の取調べにも準用されている(刑訴法二二三条二項)。 このように、法が、捜査機関が供述調書を作成することを認める一方で、被疑者や参考人に、調書の閲覧権、署名・押印拒絶権を保障しているのは、供述調書が後に供述者の運命を左右する重大な証拠となる可能性があることから、それが供述者の自由な意思に基づき作成されているか、供述したことが正確に記載されているか、表現は適切・妥当か等を慎重に吟味・検討する機会を供述者に付与し、そのような吟味・検討を踏まえたうえで、供述者が当該供述調書に署名・押印するか否かを判断させる趣旨にでたものである。供述者に弁護人が付いている場合には、供述者は自己の弁護人と共にこうした吟味・検討を行うことができなければならない。そうでなければ、「弁護人の援助を受ける権利」が保障されているとは、到底言えないからである。 ところで、被疑者や参考人は、捜査機関に対し、自己の供述調書のコピーを交付するよう要求する権利があるだろうか。確かに、現行法上、このような権利を、直接認めた明文の規定はない。 しかし、わが「ミランダの会」は、前記のとおり、供述者に供述調書の「閲覧権」があるのなら、その「コピー権」も認められて当然と考える。何故なら、供述調書の内容を十分に吟味・検討するには、まず当該供述調書の内容を正確に認識する必要があり、そのためには供述者やその弁護人において供述調書を閲覧するだけでなく、同人らにそのコピーが交付されることが不可欠だからである。供述調書は、供述者本人のものでもあると考えるべきであろう。 泉徳治浦和地裁所長は、「参考人調書の内容は同執行官本人が話したことなので、それが本人の手に渡ることには実害もなく問題はなかった」と発言している。供述調書のコピーを供述者本人が所持することは、むしろ当然のことであるとの認識を示したと言えよう。 勾留状の請求のために検察官が裁判所に一件記録を提出し、裁判官がそれを閲読する行為は、令状裁判官が裁判を行うための「事実の取調べ」(刑訴法四三条三項)であり、この取調べが終了した後の一件記録は、本来裁判所が管理すべき性質のものである(証拠調べに関する刑訴法三一〇条)。従って、この書類をコピーするか否か、第三者の閲覧を許すか否かの権限は裁判所にあるのであって、先に述べた供述者の調書「閲覧権」「コピー権」の趣旨に照らして、裁判所が独自の判断で供述者に調書のコピーを交付するということも適法な措置と言うべきである。 しかるに、浦和地検高村七男次席検事は「裁判所に見せた資料は、勾留の必要があるかどうか判断してもらうためのもので一切外部に出さないことになっている。それを裁判所がコピーしたとしたら、とても容認できることではない」と発言している。かかる発言は、検察庁が一件記録の管理権限が自己に帰属するとの前提に立って、裁判所を批判するものであり、大きな誤りである。 現行実務において、供述調書の作成に際し、供述者は調書の末尾に署名・押印するのみであり、調書の訂正印や割印ですら、供述者自身ではなく、供述録取者たる警察官や検察官が行っている。このような実務が、白紙調書事件等の供述調書の捏造を続発させる(福岡県南警察署・岡山県倉敷水島署等)のである。供述者に必ず自己の供述調書のコピーが交付されるなら、このような事件も防止できるであろう。 わが「ミランダの会」は、今後も取調べの可視化を目指し、供述調書の「コピー権」の確立に向けて一層の努力を傾注するものである。 供述調書を供述者自身の手に取り戻すために 一九九五年一一月二七日 「ミランダの会」会員一同 |HOME|ミランダの会とは|活動記録|記事・論文|エッセイ|書式集|資料集|刑事弁護Q&A|フォーラム| Copyright (c) 1999-2003 mirandanokai
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