トップページへ戻る
トップページに戻る

活動記録

MIRANDA ASSOCIATION

ミランダの会が発表した宣言、記者発表、コメントほか

homeへ戻る

「ミランダの会」宣言
 被疑者の黙秘権を確立するための弁護活動に関する宣言 (1995.2.13)

 

わが国の被疑者取り調べ制度は野蛮である。警察の留置場に20日間以上も被疑者の身柄を拘束したうえ、警察は連日のように彼や彼女を取り調べる。取調べは朝から夜まで続き、時には深夜にまで及ぶ。取調べは狭い密室で行われ、第三者の関与は排除される。弁護士や親や保護者が立会うこともない。取調べ中であることを理由に捜査官は被疑者とその弁護人との面会を制限することもできるし、取調べ中であるかどうかに関係なく、何週間にもわたって妻や夫、親兄弟、知人など一切の者との面会や通信を完全に禁止することもおこなわれている。

憲法には個人の基本的な権利として黙秘権があることが記載されている。しかし、捜査官は被疑者がこの権利を行使することを心配する必要はない。万が一被疑者がこの権利を行使しようとしても、捜査官は尋問をやめることは決してない。捜査官は密室の中で様々な方法をつかって被疑者に自白することが最善の方策であることを説得する。そして裁判官は、十分な供述をしない被疑者に対して、勾留の延長や保釈の拒否という罰を与えることによって、捜査官が自白を獲得するために極めて有力な援助を与えている。

こうして、大部分の被疑者は自己の罪を認める供述を行う。かなり多くの者が後にその自白の全部または一部を撤回するが、それが成功する確率は極めて小さい。さきに述べたように、わが国においては被疑者の取調べに弁護人や親兄弟などが立会うことはないし、また、取調べの経過を録音したり、録画したりして客観的に記録するということも行われていないのである。すなわち、わが国においては、取調べ室の中で何が行われたかについては、取調べをした捜査官と取調べを受けた被疑者にしか判らない仕組みになっているのである。取調べの結果として裁判所に呈示されるものは捜査官が作成した供述調書だけである。そして供述調書は、被疑者の述べた通りを忠実に機械的に記録したものではなく、取調べを行った捜査官が自ら要約したものであって、その記載からは、どの部分が被疑者の自発的な供述で、どの部分が強制や誘導の結果なのか全く判らない。被疑者には捜査官の違法行為を証明する手段が全く与えられていないのである。

法廷では、捜査官による暴行や強制や誘導のために不本意な自白をしてしまったと言う被疑者と、そのような事実はないと言う捜査官とが対立することが良くある。日本の裁判官たちは、このような場合、被告人の主張は罪を免れるための虚言であると決めつけることが圧倒的に多い。たとえ幸運にも捜査官による強制を立証できたとしても、問題の自白が排除されるとは限らない。否認する被疑者を、休憩も与えずに20時間以上連続して取調べて得た自白であっても、わが国の最高裁判所は「任意性には疑いがない」と言い切るのである。

日本弁護士連合会や各単位弁護士会は、当番弁護士制度を創設し、組織を挙げてこれを強力に推進し、多くの成果を挙げている。しかしながら、上記のような被疑者取調べ制度の基本的な問題の解消については、その萌芽すら見られないのである。当番弁護士は、1回無料の接見を行い、被疑者に対して黙秘権という権利の存在をアドヴァイスし、決して意に沿わない供述調書に署名はしないように忠告する。しかし、この助言に従って、黙秘権を行使できる被疑者がいるだろうか?「その調書には、自分の言ったのと違うことが書いてあるから署名しません」と胸を張って捜査官に言える被疑者が一体何人いるだろうか?およそ30年前、アメリカ連邦最高裁判所はミランダ対アリゾナ事件判決のなかで、こう述べている。

弁護人によって予め与えられた助言でさえ、密室での取調べによって容易に打ち負かされてしまうのである。したがって、第5修正の特権を保護するための弁護人の必要性というのは、取調べの前に弁護人と相談する権利のみならず、被疑者が望むならば取調べの間弁護人を在席させる権利をも包含するのである。(Miranda v. Arizona, 384 U.S. 436, 1966, at 468)

接見をして被疑者に助言や注意を与えただけでは、取調べに臨む被疑者のための弁護活動としては不十分なのだ。この現実認識からわれわれは出発する。そして、われわれは、もはやこれ以上待つべきではなく、一刻も早く行動を起こすべきだという結論に達した。われわれは、日本の被疑者取調べの野蛮を解消するために、行動を起こすことにしたのである。これこそがわれら日本の弁護士に負託された使命であると信じるからである。

わが国の被疑者取調べ制度を、現在の野蛮から文明の基準に向けて少しでも引上げ、近い将来において黙秘権の完全な保障を確立するために、現段階において踏み出すべき第一歩として、われわれは以下のとおりの弁護活動を実践することをここに誓う。

  1. 否認事件など、弁護人の立会なしに取調べに応じるべきではないと判断される事件では、弁護人の立会いがない限り一切の取調べを拒否することを被疑者に助言し、かつ、それを実現すべく最大限の努力をする。
  2. 自白事件を含む全ての事件において、供述調書の内容を弁護人が確認しない限り一切の署名及び押印を拒否することを被疑者に助言し、かつ、それを実現すべく最大限の努力をする。
  3. 以上の要請に反して作成された供述調書の証拠能力については、可能な限り徹底的に争う。

この弁護活動は、被疑者の黙秘権の完全なる確立を直ちにもたらすものではない。しかし、現時点における惨状を少しでも改善し、将来においてわが国の被疑者取調べ手続を文明化し、黙秘権の確立をもたらすための貴重な第一歩であると信ずる。われわれは刑事弁護に携わるすべての日本の弁護士たちがわれわれに続いて上記の実践を行うことを強く希望する。

以上のとおり宣言する。

1995年2月13日

homeへ戻るページトップへ戻る

HOMEミランダの会とは活動記録記事・論文エッセイ書式集資料集刑事弁護Q&Aフォーラム

Copyright (c) 1999-2003 mirandanokai All Rights Reserved.
当サイトで使用している写真および、テキストの無断転載を禁止します。

※このウェブサイトはInternet Explorerのバージョン4.0以上
あるいはNetscape Navigatorのバージョン7.0以上でご覧下さい。



管理者だけが利用できるページです。
ミランダの会:事務局

ミランダの会ウェブサイト 管理者:高野隆