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エッセイ

MIRANDA ASSOCIATION

刑事弁護の体験談、刑事司法改革について意見

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ミランダの会活動報告1
黙秘権確立のために 一七件の事例を報告

季刊刑事弁護4号107頁、現代人文社の許可の下に転載しました。


一九九五年六月二三日午後五時、第二東京弁護士会館三階会議室において、「ミランダの会」第一回事例報告会が行われた。会員弁護士だけでなく、「ミランダの会」について関心を寄せている弁護士、研究者など合計二〇名が参加した。
 当日は、オウム真理教信者の被疑者に対するミランダ方式の弁護活動が招いた波紋が未だ覚めやらぬこともあって、まず事務局より、東京地検甲斐中次席検事発言を端緒とする、今回の一連の騒動に関する経過説明が行われた。これにより、「黙秘権は取調べ拒否権を含む」との当会の立場が再確認された。

次いで、各会員から、これまで実践したミランダ方式の弁護活動についての事例が報告された。各会員には、事前にアンケート用紙を送付し、当日提出してもらった。各会員の当日の報告及び回収した右アンケートの結果から、以下の諸点が明らかとなった。

報告された事例

まず、当日報告された事例は、合計一七件(埼玉一三件、静岡三件、東京一件)であった。
 これを罪名別に見ると(被疑者が複数の罪の嫌疑を受けている場合もあるので、合計数は報告事例総数以上となる)、恐喝(四件)、覚せい剤取締法違反(四件)、殺人(三件)、窃盗(三件)、死体損壊・遺棄(一件)、有印私文書偽造(一件)、強姦(一件)、傷害(一件)、業務上過失致死(一件)、大麻取締法違反(一件)、青少年健全育成条例違反(一件)であった。

被疑者の対応

被疑事実に対する被疑者の対応は、自白(六件)、否認(一〇件)、一部否認(二件)、重要な情状に関して否認(一件)であった。

弁護側の対応

採用したミランダ方式の内容は、取調べ拒否(四件)、署名・指印拒否(一七件)であった(両方式を併用した事例も含まれる)。取調べ拒否をした四事例について、被疑事実に対する被疑者の対応を見ると、否認が三件、重要な情状に関して否認が一件であった。右三件の否認事件については全て出房拒否であり、重要な情状に関して否認の事例は逮捕されるまで出頭拒否をした事例であった。これらの四件中、一件は不起訴、一件は処分保留で釈放となっている。

捜査機関の対応

ミランダ方式の弁護活動に対する捜査機関の対応は、「弁護人に対する誹謗・中傷」「弁護人を解任させようとした」「出房拒否の被疑者を担架に縛り付けて送検した」「出房拒否の被疑者を拘置所の職員が実力で房から引きずり出し、所内の取調室に同行した」「出頭拒否を理由に逮捕状を請求し、逮捕した」「自白事件で起訴され起訴後の勾留を利用して余罪を取調べている状況で、余罪について客観的証拠も保全され、自白しているにも拘わらず(但し検面調書に署名拒否)、余罪の追起訴を遅らせた」「弁護人と共に確認しない限り調書に署名しないとの申入書を撤回する旨の上申書を被疑者に作成させた」等が報告された。

ちなみに、捜査機関がどのような言葉で被疑者と弁護人との信頼関係を破壊しようとしているかであるが、次の報告があった。
「署名しないと裁判で不利になるぞ」
「あの弁護士はオウムの弁護士の仲間なんだぞ」
「俺の仕事が終わらないんだ。何とか名前を書いてくれないか」
「あの弁護士の言いなりになれば、どんどん重くなるばかりだ」
「調書に署名しなければ、処分ができず、裁判が長くかかるぞ」

裁判所の対応

ミランダ方式の弁護活動に対する裁判所の対応は、「出頭拒否を理由にした逮捕状請求を認めた」「保釈請求に対し、調書に署名がないことを理由に却下した(準抗告審で許可された)」等が報告された。その他は、特にミランダ方式の弁護活動によって被疑者に不利益が生じたということはなかったようである。

実行状況

ミランダ方式の実行状況であるが、被疑者は、概ね弁護人の指示を守りミランダ方式を(少なくとも署名・指印拒否は)実行できていると言えよう。但し、自白事件について、ミランダ方式を貫徹できなかった事例が二件(窃盗、覚せい剤取締法違反)報告されている。自白事件、それも軽微な自白事件について、いかにミランダ方式を貫徹させるか、あるいは一定限度で妥協するかは、今後の検討課題である。

特筆すべき事例として、浦和地裁において勾留質問に立ち会った事例が二件(裁判官は別人)報告された。また、大麻取締法違反の現行犯(自白事件)で、逮捕時に受任し、勾留質問の立ち会いを求めたが認められなかったので勾留質問調書に署名を拒否したところ、勾留されたが、勾留に対する準抗告が認容され釈放となり、以後在宅事件となった事例が報告された。

取調べ立会いへの道のり

当会の当面の獲得目標である、@取調べに対する立ち会い、A調書の事前確認が認められた事例は報告されなかった。但し、会員のうち、二月一三日のミランダ宣言以前に、在宅事件について取調べ立ち会いを実現した経験を有する者が一名いた。
 また、従前から指摘されていることであるが、今回の調査においても、静岡においては公判で署名のない調書が証拠調請求されているが、浦和では署名なし調書は証拠調請求されていない。いずれにしても、ミランダ方式が貫徹できれば、公判において調書の任意性・信用性の問題は一切生ずる余地はなくなることになる。

以上、今回は総括的な報告に止まったが、機会があれば参考となる個別事例の報告もしたいと考えている。われわれは、今後も一歩ずつ「ミランダへの道」を歩み続けるつもりである。そのことに、もはや迷いはない。多くの弁護士がわれわれに続くことを願ってやまない。

(萩原 猛/弁護士)

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